日経ビジネス 早版
景気拡大、「いざなぎ越え」とはいうけど・・・
消費の現場、お寒い風景
販売攻勢は将来不安の裏返し
幕を開けたクリスマス・年末商戦。家電量販店をのぞいてみると、ちょっとした
異変が起きていた。目玉商品の液晶テレビの主役が、5月の主役の37型から
42、46、52型などのさらに大画面にシフト。40インチ以下の通常の薄型テレ
ビは、一インチ5000円となり、昨年の半額。さらに高級機種のフルスペックハ
イビジョンでも、一インチ1万円を切る。液晶陣営に対し、プラズマの雄、松下も
価格戦略で対抗。プラズマ陣営のパイオニアなどのライバルメーカーがついて
いけないほどになっている。

家電各社が年末商戦で必死の販売攻勢をかけているのには、理由がある。
2007年には追い風になるような大型イベントがないからだ。今年は、冬季オリン
ピック、サッカーW杯とう世界的スポーツイベントが重なった。その後は、2008年
まで「空白期」が続いてしまう。

一度値崩れした価格を是正するのは難しい。薄型テレビが家電メーカーの収
益を牽引する役割を担うのは、もしかしたら今年の年末商戦が最後になるかもし
れないのだ。
個人消費を喚起する材料に乏しい。2007年を見据えて、値頃感を前面に出せ
るこの年末商戦で一気に売り切ってしまいたい・・・・。イベントをテコに市場を広
げてきた薄型テレビ業界が今、向き合っているのは、来年以降の反動減に対す
る「将来不安」にほかならない。
衣料の在庫処分に四苦八苦

年末のかきいれ時を控えて、さらに深刻な状況に陥っているのが衣料品業界
だ。
東京都の湾岸部周辺。大手婦人服メーカーの営業担当幹部が、セールスそっ
ちのけで空き倉庫探しに歩き回っている。10月に思ったほど気温が下がらなか
ったことで、秋冬ファッション商戦のスタートダッシュに失敗。売れ残ったり、小売
店に引き取ってもらえない大量の在庫を保管しておく場所が必要になったという。
米有力アパレルメーカーは、全国に散らばるアウトレット店に号令をかけたば
かりだ。「半額でもいいから、12~1月の2ヶ月間で、今の店頭在庫をゼロにして
もらいたい」。売れ残った正規の秋冬物を年明け以降、アウトレット店で販売する
考えで、そのための売り場スペースを確保する狙いだ。
例年より4ヶ月も早い10月中旬に「社員向けセール」を開催したのは、大手カ
ジュアル衣料専門店チェーン。社員とその家族200人あまりを集め、一流メーカ
ーのジーンズやシャツを、希望小売価格より40~50%ほど安い価格で大量に
「処分」した。9月まで既存店の売り上げは前年実績を上回っていたが、10月の
大幅減が避けられないと見て、いち早く在庫解消に打って出た。
衣料品業界は今、この手の話題に事欠かない。専門店チェーンの勝ち組とよ
ばる各社も、10月の既存店は減収。「20年ぶりの厳冬でコートなどが売れた昨
年の実績を超えるのは容易ではないと覚悟していたが、これほど売れないとは
思ってもみなかった」と表情が厳しい。
この事態は、昨年のような厳冬という“イベント”でもない限り、衣料品販売が盛
り上がらないことの裏返しとも言える。昨年末にかけて、株高で潤った個人などの
需要で百貨店で高額の美術品が売れる現象がみられたが、それも、資産効果と
いうある種の“イベント”に支えられていた。サッカーW杯、五輪がないと商品が売
れない家電業界と同じ“イベント”頼みの構図が透けて見える。
「そのうち点火」期待は禁物
個人消費に関する指標は総崩れに近い。百貨店は2ヶ月ぶり、外食レストラン
は8ヶ月ぶりに減少。東京都のタクシーは、実車率が130ヶ月連続で50%割れ
が続いたまま。労働分配率は、55%とピーク時の10ポイントも下回り、賃金増
として、個人に波及しない。しかも、衣料品や耐久消費財は大方、よほど買いた
い物しか買わないという具合に、消費者の行動そのものが変わってきたことも見
逃せない。
7~9月期のGDP(国内総生産)統計で、消費減速がはっきりし、政府月例経
済報告もついに景気判断を下方修正した。エコノミストの消費の落ち込みは一時
的という楽観シナリオに頼るには心許ない。

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